鴻海に身売りしたシャープに続き、
東芝まで社内の半導体部門など切り売りを始めたので、
いったい日本の家電メーカーは
どうなってしまったのだろうと思って読みました。
筆者は、52歳の元日経の記者だったジャーナリストです。

まず初めて知ったのが、日本の家電メーカーは、
20年くらい前までは、東電などの電力会社と、
NTTという独占企業の通信会社から、
毎年莫大な金額の設備投資の依頼を受けていたこと、
そのお金は、国民が電気料金、電話料金として、
ほぼ、税金のように文句の付けようがなく支払っていたお金でまかなわれていたことです。
これでは安定していたはずです。

P36,37より引用

ところが、その後、電力の自由化、通信の自由化などが始まり、
おまけにリーマンショックや、東日本大震災と
福島第1原発事故などが起こり、
東電やNTTなどからの設備投資のお金が
がた減りしたのだそうです。
安定的な収入を失った家電メーカーは、
いろいろな対応策を打ちましたが、ことごとく失敗したみたいです。
今、問題になっている東芝は、福島第1原発の事故のあとも、
原発の海外輸出を諦めず、巨額の負債を負っていたアメリカの原発会社ウエスチングハウスを手放さずに、傷口を広げてしまったらしいです。
鴻海に身売りしたシャープも、アクオスなどの液晶テレビが売れていたときに、巨額の投資をして巨大工場を建てたはいいけど、
リーマンショックでパタッと販売が止まっても、
切り替えたり、引き返すことができず、巨額の負債を負ってしまったようです。
戦前の日本軍の大艦巨砲主義にたとえていましたが、
世界がインターネットで動き出し、携帯電話がスマートフォンに変わり、ものを売る時代から、コンテンツなどのサービスを売る時代になっても、旧態依然とした箱物を売り続けようとしたことが、
日本の家電メーカーが落後していった原因だとしています。
たしかに、パナソニックも、ソニーも、かつての輝きはありません。
でも、鴻海に買収されたシャープが息を吹き返し、
サンヨーやシャープを追われた大阪の技術者たちが流れ込んだアイリスオーヤマが大阪の研究所で開発したヒット作を連発しているように、まだまだ日本の技術者たちは負けていません。
日本にジョブズみたいな経営者が現れれば、きっと大ヒットする商品を生み出すこともできるのではないかという希望も持てました。

P43より引用