おばさんの菊

我が家のトイレに、こんな鉢植えがあります。
これは、そのままではわかりにくいので、パソコンの前に持ってきて撮影したものです。
何か分かりますか?

そう、緑の葉っぱは、菊の葉っぱです。
枯れた葉っぱも、菊の枯れ葉。
そして細くて長いのは、露草かなんかでしょうか。

なんでこんな鉢植えになったのかというと、
元々は去年、90歳を超えて亡くなったおばさんの葬式の花だったのです。

その頃、大病の後で、療養中だった私は、おばさんの葬式にも出席することができませんでした。
香典を家族に依頼して、お返しに香典返しと菊の花をいただきました。
いつも葬式で頂く花は、白い菊が多く、枯れるまで花瓶に生けて、
枯れると捨てていました。

しかし、なぜだかこの菊は、1輪だけなかなか枯れずに、ずっと後まで残ったのです。
枯れないものを捨てるわけにも行かず、小さなコップにさして、2階のトイレに飾っておきました。
そして、水が減ると換えていました。

そのうちに、1ヶ月くらい経ったでしょうか。
とうとう花が枯れ始めました。
もうこれ以上置いてもしょうがないかな、と思って、
コップを持ち上げてみて、驚きました。
コップの水の中に、たくさんの根が張っていたのです。
まだ生きていたんだ。
もう捨てられません。

枯れ始めた花を切り落として、葉だけにして、水の代わりに鉢植え用の栽培土を入れておきました。
そして年が変わりました。

初めに1本、離れたところに、ヒエみたいな細い芽が出てきました。
抜いてしまうのも可哀想なので、そのままにしておきました。

次に、その隣に、小さな双葉が出てきました。
こりゃまた雑草かな、と思いつつ、抜かずにとっておきました。
そのうち、その双葉は、瑞々しい春菊みたいな葉になりました。
あれ?この葉ってひょっとして・・・?

そのうちに元の菊の葉はどんどん枯れていきました。
そう、元の葉が枯れて、新しい葉が根元から生えていたのです。

ということで、今ではおばさんの菊は、元の葉は枯れてしまいましたが、
次の世代の新しい葉が伸びてきたのでした。

春になったら、庭のどこか暖かいところに放してあげようと思います。
おばさんから命をもらったような気がします。
おばさん、ありがとうございました。